ライフステ-ジを考慮した居住地・従業地一括決定モデルの開発とその理論的検討については、関連既往研究調査とその体系的整理を踏まえて一応の完成を見ている。 また農山村出身住民の居住地・従業地選択行動の実態把握およびライフステ-ジの変遷特性把握についてもアンケ-ト調査を実施し、その集計整理、分析を終えている。 以上の成果として、平成2年7月には土木学会論文集、第419号/IVー13に「農山村過疎地域における転出・帰還行動のモデル化に関する基礎的研究」と題する論文を著した。その主な結論は、(1)農山村過疎地域住民の転出・帰還行動は、居住地・従業地を一括して決定したものとなっており、非集計行動モデルがその現象をよく説明できる、(2)世帯構成の変化等のライフステ-ジの進展が転出・帰還行動に伴って現れており、それを明示的に分析するモデル化を行った、(3)転出・帰還行動は過去および将来にわたっての効用を動的に判断しながら行っている、(4)帰還行動の動機づけとしては家産の継承が大きな説明力を持つ、などである。 今後の課題としては、転出・帰還行動と社会基盤整備効果との関係を定量的に分析する必要があるが、そのためには居住環境、就業環境の定量的計測手法の開発、あるいは農山村・都市間の通勤条件、交通条件の評価方法の開発を行わなければならないと考えている。
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