研究概要 |
黄色ブドウ球菌のゲノムプロジェクトから、黄色ブドウ球菌染色体上には細菌間で保存された機能未知の遺伝子が589個存在することが明かとなった。これらの遺伝子をプラスミドの挿入により破壊し、その結果、カイコ殺傷能力が減少するか否かを検討した。126個の機能未知遺伝子についてターゲティングプラスミドを作成し、黄色ブドウ球菌への形質転換を行った。その結果、100株の遺伝子欠損候補株を得た。これらの株のカイコ殺傷能力を検討したところ、3株のカイコ殺傷能力が著しく減少した。3株の染色体の構造を確認したところ、それぞれ目的の遺伝子が破壊されていた。これらの遺伝子をcvrA, cvrB, cvrC (conserved virulence regulator)と名付けた。次に、3株のマウス殺傷能力を検討したところ、マウス殺傷能力も減少していた。これらの結果は、cvrA, cvrB, cvrC遺伝子が黄色ブドウ球菌の病原性発揮に必要であることを示している。これらの遺伝子破壊株の病原性低下の機構を知る目的で、alpha-toxin, beta-toxin, gamma-toxin, deoxyribonucleaseの産生量を検討した。その結果、cvrA遺伝子破壊株では、これら全ての産生量が低下し、cvrB, cvrC遺伝子破壊株ではdeoxyribonuclease以外の産生量が低下していた。このことから、これらの遺伝子が病原性発揮の上流で機能し、病原性発揮の実行因子である毒素類の発現を制御していることが考えられる。
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