本研究では、アブラナ科自家不和合性制御遺伝子MODを単離し、その機能を解析することを目的としている。今年度はBrassica rapa高分子ゲノムDNAライブラリーを用いて以下の実験を行った。 1.B. rapaの高分子ゲノムDNAライブラリーから、MODと連鎖しているアクアポリン遺伝子MLM(MIP gene linked to MOD)周辺領域の高分子ゲノムクローンをスクリーニングし、コンティグを作製した。 2.高分子ゲノムDNAクローン上に存在する遺伝子のcDNAの簡便な単離法を開発した。この実験系の確立において、classIISハプロタイプのS遺伝子座の高分子ゲノムDNAクローンを解析対象として用いた。2つの高分子ゲノムDNAクローンでカバーされた86.4kbの領域についてゲノムの塩基配列を決定し、単離したcDNAの塩基配列と比較した結果、8種類の推定遺伝子領域に由来するcDNAが単離された事が分かった。また、ここで確立した方法が、組織特異的発現をする遺伝子や、条件により転写量が変化する遺伝子のcDNA単離に用いることができることが分かった。3.2の方法を用い、MLM周辺領域の高分子ゲノムクローン上の遺伝子のcDNAの単離を行った。MODは柱頭で発現している遺伝子であると考えられるため、柱頭由来のcDNAの単離を試み、これまでにMLMを含み25種類のcDNAを単離した。これらcDNAの塩基配列について相同性検索を行った結果、21種類はシロイヌナズナの第2染色体のPIP1b周辺領域にホモログが存在した。PIP1bはシロイヌナズナにおいてMLMに最も高い相同性を示す遺伝子であり、B. rapaのMLM周辺とシロイヌナズナのPIP1b周辺領域との間に、広範囲にわたりシンテニーが存在することが分かった。
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