本年度は交付申請書に記したように、二種類の研究を行った。まず降着円盤の数値シミュレ-ションについて述べる。我々は今までに二次元の数値シミュレ-ションを行って、渦状の衝撃波が発生することを示した。しかしその結果に対して、三次元の場合では渦状衝撃波は発生しないのではという批判があった。そこで今回は、他の条件はそのまま、つまりr=1.2の非粘性のポリトロピック・ガスを仮定して、その運動を三次元Euler方程式を数値的に解く事により調べた。その結果、やはり渦状の衝撃波が発生するという結論を得た。しかしながら、積分時間は連星系の公転周期の半分しか進んでいないので、さらに計算を進める必要はあるであろう。イタリアの研究者たちはSPH法を用いて、同じ様な状況の計算を行ったが、渦状衝撃波は発生していない。しかしかれらの使用した粒子数は三次元で1500ほどでしかなく、信頼のおけるものとはいえない。また長沢とやはりSPH法を用いて計算したが、こちらの結論も実ははっきりしない。ともかくこの問題は、さらなる研究が必要である。もうひとつの問題として、名古屋大学の福井氏によって提案された、星間雲と星間風との相互作用がある。われわれは実際は超新星SN1987Aの爆発ガスと星周リングの相互作用を念頭においていたのであるが、流体力学メカニズムとしては同じことである。星間雲を表す円柱状の低温・高密ガスが高温・低密ガスに浮かんでいるとする。そこへマッハ数4000の風が吹きつけたとして、それとの相互作用を数値シミュレ-ションした。その結果、星間雲の前にはバウ衝撃波が発生し、衝撃波の一部は星間雲に浸透してそれを圧縮する。星間雲を過ぎ去った衝撃波は背後に複雑な衝撃波の干渉を生み出す。また星間雲の一部は後方に吹き流される。これは福井氏たちの観測と定性的には合うものである。
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