研究課題/領域番号 |
03304053
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐々木 正夫 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (20013857)
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研究分担者 |
斉藤 眞弘 京都大学, 原子炉寒実験所, 助教授 (40027454)
澤田 昭三 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (60034625)
鈴木 文男 金沢大学, 薬学部, 助教授 (10019672)
小林 克己 高エネルギー物理学研究所, 放射光実験施設, 助教授 (20114077)
檜枝 光太郎 立教大学, 理学部, 教授 (20062656)
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キーワード | 低エネルギー放射線 / 軟X線 / 中速中性子 / 光電吸収 / 生物学的効果比(RBE) / 染色体異常 / 突然変異 / 光子活性化療法 |
研究概要 |
X線や中性子を含め、低エネルギー放射線は従来より適当な線源がなかったことや測定技術が不完全であったことから生物実験のデータがなく放射線の生物作用の理論的解明のボトルネックとなっていた。本研究は最近利用可能となってきた軟X線や中速中性子を駆使して低エネルギー領域の放射線の生物作用の機構を解明するこを目的としている。 軟X線の物質との作用は光電吸収による。この原理を利用してDNAの主鎖を構成するリン原子の共鳴吸収の生物効果を調べた。プラスミドDNAの切断はリン原子のエネルギー吸収でよく説明できるが、イーストの突然変異や哺乳動物細胞の染色体異常と致死効果はそれだけでは説明できず、DNA外に存在するリン原子からの二次電子の寄与も存在することがわかった。販線造影剤でヨード原子を含むものを血液に加え、X線の管電圧を変えて照射するとヨード原子のエネルギー吸収に比例して染色体異常が形成され、光電吸収を利用したがんの選択的治療の可能性が示唆された。また、染色体異常を指標とした二次電子のエネルギーと生物効果の関係が求まったので、これをもとにβ崩壊核種や重粒子線の生物効果を推定する理論的基礎の確立が考えられる。 中性子に関しては、従来より200KeV以下のエネルギーを出せる加速器がないことから実験データがなかったが、核分裂中性子を中性子フィルターを使って低エネルギー化し、平均エネルギーにして27KeVまで実験することが可能となった。その結果、染色体異常を指標とした生物学的効果比は1MeV中性子と比べて大きく変らないことがわかった。低エネルギー中性子の生物効果の解明は、原爆中性子の問題と関保して重要である。広島大学原爆放射能医学研究所では加速器を導入し100KeVまでの単色中速中性子の発生に取り組み、細胞致死およびがん化を指標に予備的実験を行った。エネルギー効果は認められない。
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