研究課題/領域番号 |
03305011
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
森下 直貴 浜松医科大学, 医学部, 助教授 (70200409)
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研究分担者 |
清水 正之 三重大学, 人文学部, 教授 (60162715)
植村 研一 浜松医科大学, 医学部, 教授 (60009561)
弘 睦夫 広島大学, 文学部, 教授 (80033504)
小原 信 青山学院大学, 文学部, 教授 (30084239)
免取 慎一郎 山梨大学, 教育学部, 教授 (20020373)
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キーワード | バイオエシックス / 日本的伝統 / 意志決定 / 差別 |
研究概要 |
本研究のねらいは、欧米、とくにアメリカ流のバイオエシックスの直輸入ではなく、「日本における医療と生命にかんする倫理」を体系化し、さらにそのことを通じて、倫理学そのものを現代の水準において再検討することにある。本年度の成果としては、全体を考え導く「原則」を把握できたことである。このことによって少なくとも、研究目標の前半は達成できたと考える。 原則とは、すなわち、医療と生命の問題を論じる際には、アメリカ流の「利益」と「快楽」の言語、近代的な「合理性」(物質)の言語はもちろんのこと、とりわけ日本的な「家族(親子の思いやり)」の言語をもちいない(それらの言語空間の中に閉じ込もらない)ということである。最後の点を少しく具体的化すると、「家族」のつながりは日本社会の慣習として大事にしながらも、この枠をこえ出るかたちの「つながり」をさまざまに作り上げることによって、その狭さ・マイナスを克服することにほかならない(尊厳死宣言、臓器提供、障害新生児への対応など、あらゆるケ-スに適応できる)。一般化するならば、伝統・慣習との対話をとおして、その長所を伸ばしつつ弱点を克服する、という考え方である。 以上「原則」によって実現される、「日本」における「体系化」の意味とは、第一に、これまで関連づけられてこなかった、生殖医学とタ-ミナルケアとをつなげて統一的に論じること。第二に、生命の倫理だけを孤立させることなく、現代日本社会のかかえる倫理全体につなげること(差別問題)、あるいは、個々人のレベルで言い換えれば、人生の最初期と終末期だけを特別視することなく、人生全体とのかかわりのなかに位置づけることである。以上の成果にもとづいて、次年度は論の展開を図りたい。たとえば、日本特有の意志決定のやり方(個人無視でも、家族無視でもない、共同決定の可能性)、病気・障害をめぐる差別、生命の尊厳と人間の尊厳、タ-ミナルケア、など。(次年度、著書として世に問う予定で分担を決めている。)
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