研究概要 |
1.本研究初年度の平成3年度研究経費によって,多元素シ-ケンシャル型ICP発光分光分析装置(セイコーSPSー1500R)を購入した。この装置は平成3年8月末に愛媛大学理学部地球科学教室に搬入設置された。装置自体の調整作業は9月初旬に終了し,引続き,実障試料の分析に活用する為の検討を進めて来た。平成4年2月にはこの検討作業も終了し,現在はル-チン分析に活用出来るようになった。 2.堆積物・堆積岩のREEを含む多元素定量分析システムは,既設の小型ICP分析装置(島津ICPSー50)によって,検討を進めてきた。これにより,川辺は水野,榊原と協力して太平洋深海マンガンノジュ-ルと先カンブリア紀縞状鉄鉱層のREE分析を行い,各々に特徴的なテトラド効果を見いだした。 この結果については,91年度地球化学会年会にて二件の口頭発表を行った。また,川辺は,日本列島構造帯に産する石灰岩の数十試料について,海水に類似する下に凸なREEテトラド効果と正のY/Ho比異常を確認した(92年4月京都での地球惑星科学関連学会合同大会にて口頭発表の予定)。 3.川辺はFeーMn水酸化物とNaCl水容液間のREE,Y,Scの分配関係について実験的検討を行い,天然のFeーMnに富む堆積物デ-タとの整合性を見いだした。川辺はまた,テトラド効果に関する新しい理論式を提唱し(Geochem.J.に投稿),テトラド効果に対する理論的根処を明確にした。 4.小松は川辺や他の共同研究者とともに,領家帯の堆積岩源変成岩の変成岩岩石学研究とともにREE分析を行った。そして,領家帯における変成作用の進行が,堆積岩を主体とする地殻物質の部分溶融過程と強く結び付いていることを明かにした。この結果は92年地質学会(熊本)にて口頭発表の予定。
|