研究概要 |
(1)初年度の研究経費により購入したICP発光分光分析装置(セイコーSPS1500R)によって,日本列島の先新生代の堆積岩・堆積岩源変成岩のREE分析を進めている。今年度は,中部地方の二畳紀石灰岩とこれに伴うチャートや緑色岩,飛騨石灰質片麻岩を主な検討対象とした。また,前年度以前に実施した島津ICPS-50による石灰岩・Mnノジュール試料のREE分析の結果のうち,低いREE濃度の試料,感度不足によって一部のREEが定量出来なかった試料については再測定を行い,精度の良いデータを得た。これらの研究結果の一部は,「ICP発光分析法による石灰岩標準試料中の希土類元素の定量」と題した準備中の報文で報告する予定である(川辺,小松,水野)。 (2)北海道の常呂帯に於て,石灰岩とこれに伴う珪質頁岩・玄武岩などの調査とサンプリングを行った。この石灰岩は,熱水活動が盛んであった海域で生成したと考えられ,その化学的特徴について検討するため,試料の化学分析を現在進めている(川辺,榊原)。 (3)川辺は,海洋性堆積物・堆積岩のREEパターンに見られるテトラド効果について,理論的及び実験的方法の両面から検討を進めている。現在の段階での結論は以下の通りである。堆積物のREEを選択的に濃縮する化合物がFe・Mn水酸化物である場合は,これと海水中のREEイオン或はREE錯イオンとが分配平衡にあることによって,海水中のREE濃度にテトラド効果が出現する。この内容は,理論的立場から,「希土類元素化合物・錯体の熱力学的性質とテトラド効果」と題して,また,実験的立場から,「鉄・マンガン水酸化物とNaCl水溶液間の希土類元素の分配」と題して,それぞれ,平成4年10月の日本地球化学会年会で口頭発表を行った。同名の報文を現在準備している。
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