1994 年度実績報告書

ヒト骨肉腫の増殖と転移に関する基礎的・臨床的研究

研究課題

研究課題/領域番号	03404046
研究機関	札幌医科大学
研究代表者	石井清一札幌医科大学, 医学部, 教授 (20001000)
研究分担者	小祝聡一郎札幌医科大学, 医学部, 講師 (90045336)
キーワード	骨肉腫 / 熱ショック蛋白質hsc73 / 熱ショック蛋白質hsp90 / インテグリンVLA-4 / インテグリン受容体VCAM-1 / 転移
研究概要	ヒト骨肉腫細胞株(HOS)を用いて熱ショック蛋白質が骨肉腫の増殖に及ぼす影響を検索した。まず熱ショック蛋白質hsc73と癌抑制遺伝子産物pRb110との直接会合の有無を観察した。抗Rb、抗hsc73単クローン抗体を用いて免疫沈降し、SDS-PAGE,western blotにより解析した。hsc73とpRb110とは直接、会合していることを明らかにした。hsc73のcDNAをHOS細胞に遺伝子導入することにより、細胞増殖は低下した。一方、熱ショック蛋白質hsp90についても同様に検索した。pRbとの会合は認めなかったが、cdc2との会合を確認した。そこでhsp90-c DNAを HOS細胞に遺伝子導入し、細胞増殖の変化を検索した。hsp90-cDNAを取り込んだ HOS細胞の増殖は低下していた。以上の研究結果は、骨肉腫治療に用いられている温熱療法の効果に、理論的根拠を与えるものであった。インテグリンについてのこれまでの検索から、骨肉腫細胞が発現する主要なインテグリンはVLA-4(α4β1)であることを明らかにした。VLA-4は、血管内皮細胞上に発現するVCAM-1に対する受容体である。骨肉腫肺転移におけるインテグリンの関与を検索した。α4-cDNAをヒト線維肉腫細胞株(HT1080)に導入して、VLA-4を過発現するHT-VC1細胞を樹立した。この細胞のVLA-6(ラミニン受容体)の発現は減少していた。ヌードマウスにTNF-αを静注することによって、肺血管内皮細胞にVCAM-1が発現することを確認した。次いでHT-VC1細胞を静注すると4〜6時間後に肺組織内に明らかに増加していた。VCA-4/VCAM-1結合を介して、肺の血管内皮細胞と腫瘍細胞の接着が起こることを明らかにた。しかし、肺組織の腫瘍細胞はその後漸減し、転移巣の増加はなかった。転移の成立には、血管内皮細胞下基底膜(ラミニン)と腫瘍細胞との接着が必要なことを予測させた。

研究成果
(6件)

すべてその他

すべて文献書誌 (6件)

[文献書誌] Hideki Chiba Seiichi Ishii: "A newly established cell line from normal human bone responds to 1α,25-Dihydroxyvitamin D_3,Retinoic acid and transforming growth factor-β_1" Tumor Research. 28. 41-50 (1993)
[文献書誌] Hideki Chiba Seiichi Ishii et al.: "Relationship between the expression of th gap junction protein and osteoblast phenotype in a human osteoblastic cell line during cell proliferation" Cell Structure and Function. 18. 419-426 (1993)
[文献書誌] 井上,篤志、石井,清一他: "90kDa 熱ショック蛋白質の細胞増殖における役割" 札幌医学雑誌. 63. 1-7 (1994)
[文献書誌] 薄井,正道、石井,清一他: "骨軟部悪性腫瘍に対するmicrosurgery手術の応用" 骨・関節・靭帯. 7. 309-320 (1994)
[文献書誌] Hideki Chiba Seiichi Ishii et al.: "Hormonal regulation of connexin 43 expression and gap junctional communication in human osteoblastic cells" Cell Structure and Function. 19. 173-177 (1994)
[文献書誌] Toshihide Fujisaki Seiichi Ishii et al.: "In vitro chemosensitivity assay for human osteosarcoma using tumor xenografts" Clinical Orthopedics. (in press). (1994)

1994 年度 実績報告書

ヒト骨肉腫の増殖と転移に関する基礎的・臨床的研究

研究代表者

石井 清一 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20001000)

研究成果

[文献書誌] Hideki Chiba Seiichi Ishii: "A newly established cell line from normal human bone responds to 1α,25-Dihydroxyvitamin D_3,Retinoic acid and transforming growth factor-β_1" Tumor Research. 28. 41-50 (1993)

[文献書誌] Hideki Chiba Seiichi Ishii et al.: "Relationship between the expression of th gap junction protein and osteoblast phenotype in a human osteoblastic cell line during cell proliferation" Cell Structure and Function. 18. 419-426 (1993)

[文献書誌] 井上,篤志、石井,清一 他: "90kDa 熱ショック蛋白質の細胞増殖における役割" 札幌医学雑誌. 63. 1-7 (1994)

[文献書誌] 薄井,正道、石井,清一 他: "骨軟部悪性腫瘍に対するmicrosurgery手術の応用" 骨・関節・靭帯. 7. 309-320 (1994)

[文献書誌] Hideki Chiba Seiichi Ishii et al.: "Hormonal regulation of connexin 43 expression and gap junctional communication in human osteoblastic cells" Cell Structure and Function. 19. 173-177 (1994)

[文献書誌] Toshihide Fujisaki Seiichi Ishii et al.: "In vitro chemosensitivity assay for human osteosarcoma using tumor xenografts" Clinical Orthopedics. (in press). (1994)

1994 年度実績報告書

石井清一札幌医科大学, 医学部, 教授 (20001000)

[文献書誌] 井上,篤志、石井,清一他: "90kDa 熱ショック蛋白質の細胞増殖における役割" 札幌医学雑誌. 63. 1-7 (1994)

[文献書誌] 薄井,正道、石井,清一他: "骨軟部悪性腫瘍に対するmicrosurgery手術の応用" 骨・関節・靭帯. 7. 309-320 (1994)