研究課題
本研究の目的は、インド仏教思想研究の基本資料となる梵文校訂テキストを作成するに必要な梵文古写本の収集とその整理を第一の目的とし、次に、入手した重要な資料から校訂テキストと和訳を作成し、インド仏教思想研究に不可欠な基本資料を提出することにある。その入手資料の対象は、以下の中国民族図書館(China Nationality Library)所蔵写本とネパール国立文書館(Nepal National Archives)所蔵写本である。1.中国民族図書館所蔵写本については、世界で唯一同図書館のみに現存する“Sravakabhumi(声聞地)"“Amoghapasakalpa(不空羂索経)"の2写本を入手。精査した結果、次の点が明かとなった。(1)“Sravakabhumi"写本は完本ではなく欠落があり、しかも正規の順序に配されていないこと。また、この写本には“Sravakabhumi"以外に“Asamahita bhumi(非三摩〓多地)"“Sacittika bhumi Acittika ca(有心無心二地)"“Cintamayi bhumi(思所成地)"“Srutamayi bhumi(聞所成地)"“Pratyekabuddhabhumi(独覚地)"の五地が含まれている。その中、再校訂を必要とする部分や未校訂部分をテキスト校訂し、和訳と共にその成果を発表した。(2)“Amoghapasakalpa"写本に関してはチベット訳とよく対応するが、漢訳とはあまり対応せず、むしろ漢訳にかなりの増広が認められる。現在まで漢訳にすれば30巻ある中の2巻分に相当するチベット訳・漢訳対照のテキスト校訂を行った。2.ネパール国立文書館所蔵写本については、現在までに入手した442点の写本の目録を作成し、同定作業を進めている。また、その中から“Sekoddesapanjika(潅頂宣説細疏)"写本を研究対象として、13葉ある中の9葉分までを既にテキスト校訂している。この作業も平成5年度中には終了する予定である。来年度以降の研究計画としては、“Sravakabhumi"“Sekoddesapanjika"の残る部分に対して、テキスト校訂・和訳作業を順次実施していく予定である。
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