沖縄島北部呉我(ごが)には上部鮮新統〜下部更新統とされている呉我礫層が分布しており、この最下部に厚さ2mほどの白色凝灰岩層がある。この中から火山豆石が発見された。この凝灰岩層は露出が小範囲に限られ塊状無層理である。凝灰岩にはガラス・軽石・斜長石・石英・ホルンブレンド・磁鉄鉱と少量の黒雲母が認められる。昨年度の本補助金により購入したアイソダイナミックセパレーターを用いてホルンブレンドを分離し、K-Ar年代測定を行った結果2.45Maが得られた。これと同時代の火砕物はこの周辺には認められないが、50〜60km離れた、島の南部に分布する島尻層群中には多数存在する。取り出した250個の火山豆石について測定した直経は3mmと8mm付近に極大値、約6mmに極小値をもつbimodalな分布を呈する。昨年度の本補助金により購入したプレパラップを用いてプレパラートを作成し豆石の内部構造を観察したところ、小さい方のグループ(豆石S)は不規則構造、大きい方のグループ(豆石L)は同心円構造を呈することが分った。このように内部構造の異なる2種の豆石が1つの火砕物中に確認される例は他に知られていない。火山豆石の内部構造が同心円構造か不規則構造かで領域が明瞭に分れる(直径)-(間隙率)図で他の豆石と比較すると、豆石Sは不規則構造の領域に、豆石Lは同心円構造の領域にプロットされ、調和的である。このことを、不規則構造の火山豆石は低い噴煙柱で水を膠着剤として、同心円構造の豆石は高い噴煙柱で氷を膠着剤として形成された、とする筆者の考えにもとづいて考察すると、呉我豆石S・Lはほぼ同時に形成された低・高2つの噴煙柱でそれぞれ形成されたと考えられる。
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