火山豆石の内部構造は同心円構造を持つものと不規則なものとがある。この違いが生じた原因は火山灰粒子の膠着剤の差であり、前者は高い噴煙柱内で氷を膠着剤として形成されたのに対して、後者は低い噴煙柱内で水を膠着剤として形成された、とする筆者の主張が成立することが、後者の場合にって雲仙火山で1991年6月8日に降下した火山豆石の調査で確認された。 以上の筆者の考えにもとづけば、1つの火砕物に含まれる火山豆石の内部構造は同心円か不規則のいずれか一方であるはずであるが、火山豆石を詳しく調査していく過程で、沖縄島中部、呉我の火砕物中から、大きさと内部構造の異なる2種の豆石を発見した。これは2つの異なる噴煙柱内で別個に生じた火山豆石が、噴煙柱を構成していた他の火砕物と共に、噴煙柱崩壊から堆積までのいずれかの過程で混合し、見掛け上1つの火砕物として堆積したものを筆者は推定した。これを検証するため火山豆石を構成しているガラス片の化学分析結果をMgO/FeO^*-K_2O/CaO図上で比較すると、両者は一部重複するものの明瞭に異なる領域を占める。このことは2種の豆石は異なるマグマに由来する異なる噴煙で生じたことを強く示唆し、上記の推定が正しいことを示している。 以上の研究は、従来詳しい観察が行われなかった火山豆石を詳細に調べることによって、火砕物の成因を解明できる場合があることを示している。
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