本年度は、ペリ位にメチル置換基を有するトリプチセンアミン誘導体のジアゾ化の完成とその際に生成が認められた化合物の別途合成とを中心に、その他の生成物の別途合成も行ない、ペリ位にメトキシ及びクロコ基を持つアミノ化合物の合成とジアゾ化を行なった。 メチル化合物のsc体から生成するCH結合への割り込み生成物は、4ーメチルー9ーアントロンから出発して、8段階の工程で別途合成することができ、生成物の確認を行なうことができた。オレフィン類の合成は、既に昨年度に完成して報告しているが、ap体からも生成する環状化合物の合成は本年度において行なった。またこれらの化合物は構造化学的に興味あるものであるので、X線構造解析も行なって、その構造の検討も行なった。酢酸エステルなどについても、本年度に別途合成を行なった。酸素原子を含む第三級アルキル基を9位に持つ化合物の合成は、予想に反して、困難をきわめた。2ー(9ーアントリル)ー2ーメチルプロパン酸メチルを出発原料にして、S_N2型の反応でカルボン酸とし、それをボランで還元する方法で、2ー(9ーアントリル)ー2ーメチルー1ープロパノールを合成し、これからさらに2段階を経て、目的とする化合物を合成し、熱異性化の後、回転異性体をクロマトグラフィーによって単離した。 メトキシ化合物では、sc体の場合、ジアゾ化に際して生成する炭素陽イオンがメトキシ基と反応してできる環状エーテルが主成分として生成し、酢酸エステルも、ap体に比べて顕著に増加した。クロロ化合物では、sc体の場合、酢酸エステルが主生成物となった。これらは、いずれも中間体陽イオンの置換基による安定化に帰すことができる。ap体からの生成物は、生成比も含めて、ペリ位の置換基によらずほぼ一定であった。
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