安価で入手容易な原料を高付加価値製品へと変換する効率の良い手法を開発することは、有機合成化学に課せられた重大な使命である。この観点から従来、一酸化炭素を有効に利用するための手法の開発研究が多くなされてきた。本研究は、従来ほとんど例がない、常温において進行する一酸化炭素有効利用のための触媒系を設計し実現しようとするものである。また、そのための新しい方法論、すなわち、反応基質の活性化点と他の反応体の活性化の点が異なる型の触媒を開発しその有効性を実証することも目的の1つである。具体的には、遷移金属錯体を触媒に用い、一酸化炭素とヒドロシランとを反応剤とし、常温常圧という温和な条件下で含酸素化合物に一酸化炭素を取り込ますことを検討した。 目的とする反応を進行させることのできる触媒の探索を行ない、とくにコバルトカルボニルが活性を示すことがわかった。そして、コバルト錯体に関して詳しく錯体の構造と反応性との関係を検討した。具体的には多くの種類の添加物を加えることにより錯体の構造、電子的性質を変化させ、その反応性を調べた。 目的とする反応に適合する反応基質の探索を行った。その結果、従来困難であると言われていたアルデヒドのカルボニル炭素のカルボニル化が進行することを見い出した。現在のところ、芳香族アルデヒドに限定されるが、特に精力的に検討している。 反応機構の解明には、新触媒反応設計の指針づくりに必要である。とくに、中間体の構造に関する知見を集積に努めている。
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