研究概要 |
水産植物の系統保存法の開発に関しては,主要養殖対照種(アマノリ類・コンブ類・ワカメ類など)である大型藻類培養株や魚介類種苗生産用微細藻類(ウルベラ類・マリンクロレラ類・テトラセルミス類・ファエオダクチラム類など)培養株の長期保存技術を確立するため,本年度は主にディ-プフリ-ザ-を利用して,いったん零下数十度までゆっくりと冷却し,次に極低温(ー196℃)の液体窒素に直接浸すことにより急冷するという,マニュアル式の二段階凍結法を試み,凍結保存後の培養株の生存率を左右する試料の前培養条件・凍結速度・凍結媒液の組成・解凍速度などについて,ある程度明らかにした.すなわち,アマノリ類について詳細にその条件をのべると,凍害防御剤としてジメチルスルフォキシド(DMSO),プロリン,スクロ-ス等のいくつかの化学物質に効果が認められたが,凍結媒液としては50%海水に10%DMSOと0.5Mソルビト-ルを加えた混液が最適であり,冷却速度は1℃/min周辺が適当と思われた.また,解凍は40℃のウオ-タ-バス中で急速に行うとよいことが判明した. 水産植物の機能開発に関しては,有用多糖類高生産大型藻類のスクリ-ニング・機能開発の為,アガロ-スやカラゲナンなどの有用多糖類を高濃度に持つと思われるオゴノリ類やキリンサイ類などの暖海性藻類の探査・収集を行った.また,有用微細藻類のスクリ-ニング・細胞機能の開発の為,すでに国内外から収集してある,数百株の微細藻類の中から海産藍藻Anabaenaなどの高水素発生能株や海産緑藻Chlorococcumなどの高CO_2固定能株をスクリ-ニングできた.とくに,我が国の南西諸島の西表島から単離した高水素発生株である,Anabaena sp.TU37ー1株は,その水素発生能がクロロフィル1mg当り110μmol/hrという高水準の成績を示した.
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