研究概要 |
目的 ウィルムス腫瘍,増殖の背景にある遺伝的な遺伝子変化,Wt1の欠失は繊維芽細胞にも不死化傾向を付与することが示されているが,同じく,フォン・レックリングハウゼン氏病(NF1)についても,22番染色体の遺伝子の欠失が考えられる.本研究では,ウィルス腫瘍細胞の繊維芽細胞の遺伝子変化と癌表現型の対比を検討するとともに,NF1症例を中心に遺伝子を解析した.関連した癌抑制遺伝子の研究では,膀胱癌の症例で癌抑制遺伝子の存在する主要な染色体部位について,欠失の有無を研究した. 結果 1.ウィルムス患者細胞とNF1患者細胞の発癌剤による染色体切断感受性について,現在研究を続けている.なお,結果は,細胞株の発癌剤作用に対する反応の不安定さのために,結論を得るに至っていない.2.膀胱癌の癌抑制遺伝子の変化について,49腫瘍について検討した.その結果,9q(21/38=55%),11p(20/44=45%),17p(18/42=43%),13q(10/39=26%),3p(8/41=20%),10q(2/29=7%),1p(1/36=3%)の欠失の値を得た.このうち,Grade 3以上の進行浸潤癌では,13qの欠失は6/16=44%に,17pの欠失は13/16=81%の症例に見られた.この結果,膀胱癌では9qの欠失が初期の変化として重要であり,17pの欠失は悪性変化をもたらせるものとして,重要なものであると考えられた.3.ホルマリン固定によるDNAの変化は,ラムダ-ファ-ジを用いて広範に検討された.その結果,固定液の塩濃度,pH,ホルマリン濃度の関与することが明確になった.また,ホルマリンにより,DNAの各種制限酵素の作用が大きく影響を受けることが示された.これは,DNAの塩基にホルマリンが影響を与えることを示すもので,固定材料を用いて,癌素因の研究を行うさいに,注意が必要である
|