研究分担者 |
加納 良男 岡山大学, 医学部, 助手 (70116200)
嶋田 俊秀 京都大学, 医学部, 助手 (00235623)
濱崎 周次 京都大学, 医学部, 助手 (50208576)
KANO Y. Okayama University Faculty of Medicine Research Associate
HAMAZAKI S. Kyoto University Faculty of Medicine Research Associate
SHIMADA T. Kyoto University Faculty of Medicine Research Associate
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研究概要 |
ヒト腫瘍発生における遺伝子背景についての解析を分子病理学的に行った結果、次のような成果を得た。1)ヒト胃癌37例、腺腫8例についてras遺伝子の点突然変異の有無をホルマリン固定、パラフィン包埋標本より解析した。このうち低分化腺癌の1例のみに、c-k-rasコドン13の変異(Gly;GGC→Ser;AGC)を認めた。従って胃癌、胃腺腫の発生にras遺伝子の点突然変異はほとんど関与していない可能性が示唆された。2)尿路上皮癌における癌抑制遺伝子の不活性化と癌の悪性度との関与をヘテロ接合性の消失(loss of heterozygosity,LOH)という現象を指標に解析し、染色体3p,11p,13q,17p上の癌抑制遺伝子の不活化が尿路上皮癌の発生、進展に深く関与していることを示した。とくに尿路上皮癌の悪性度には11P,17p,13q上の癌抑性遺伝子の不活性化が重要であることが、我々の結果より示唆された。17p上のp53遺伝子変異のパターンが喫煙などの環境因子に関連がある場合にも明らかとなり癌における遺伝子背景と環境因子との比較検討も可能となった。3)遺伝性網膜芽細胞腫のRB遺伝子変異はgerm lineを介して伝えられ、その変異部位の塩基配列解析により、短い反復配列が関与していることが明らかになった。一方、散発性に発生したヒト膀胱癌例においてはLOHとは関係なくRB遺伝子の不活性が起っていることが明らかとなった。従って同一の癌制御遺伝子であってもgerm lineを経て変異が起こる場合と生後に体細胞変異として発生する場合で、その機構に違いがあると考えられた。4)癌の遺伝子解析の際、材料保存に用いられいるホルマリンの影響も分子病理学的解析を行なう場合に重要な因子となることが明らかとなった。
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