正常および心筋症ハムスタ-(Biol4.6)にノルエピネフリン(NE)を投与し、in vivo心筋における核内癌遺伝子cーfos mRNAの発現レベルの推移を比較検討した。その結果、Biol4.6心筋において、早期からcーfos発現の一過性増強を認めた。このcーfos発現はα_1遮断薬で90%、β遮断薬で30%抑制された。また、cーfos発現を増強しない少量のNEを投与しトレッドミル運動負荷を行ったところ、Biol4.6心筋においてのみcーfos発現を認めた。このようにBiol4.6心筋ではα_1受容体情報伝達系の活性化が示唆された。しかし、Biol4.6心筋α_1受容体のmRNAレベルは、正常ハムスタ-と差異はなく、有意な増加は認められなかった。ヒト肥大型心筋症と類似の病像を呈する心筋症ハムスタ-における以上の実験結果は、肥大型心筋症の病因・病態を解明する上で、また臨床的に心筋症患者に対する薬物治療および運動量の決定に際し参考とすべき知見である。 一方、肥大型心筋症の多発家系における異常心筋ミオシン重鎖遺伝子の検索については、16の多発家系を含む約40名の肥大型心筋症患者の末梢血リンパ球からDNAを調整し、収集保存した。このうち、家族歴の濃厚な患者を中心に既報のプロ-ブと同一のものを用い解析を行ったが、これまでのところβ型ミオシン重鎖遺伝子エクソン13内の点突然変異は認められていない。現在、プロモ-タ-領域を含むミオシン重鎖遺伝子内の他の部位の変異につき検索中である。
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