研究課題/領域番号 |
03454255
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東 純一 大阪大学, 医学部, 講師 (30144463)
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研究分担者 |
井原 義二 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
瀧原 圭子 大阪大学, 医学部, 助手 (70252640)
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キーワード | 心筋症 / 心筋症ハムスター / 癌遺伝子 / 家族性肥大型心筋症 / ミオシン重鎖遺伝子 / 遺伝子疾患 / 点突然変異 / 心筋肥大 |
研究概要 |
本邦の家族性肥大型心筋症(HCM)家系においても、白人家系で報告されているのと同じ心筋β-MHC遺伝子変異が存在するとの前提のもとにその有無の検索を行い、さらに新たな遺伝子異常の検出を試みた。その結果、本邦のHCM患者においても、白人HCM家系で認められた14番染色体上の心筋β-MHC遺伝子の変異が存在することが明らかとなった。今回、初めて本邦のHCM患者においても検出されたβ-MHC遺伝子の606Val→Metのミスセンス変異はアミノ酸の電荷変化を伴わず、予後がよいと報告されているものである。本症例の家系内には突然死の症例はなく、明らかな病的所見を示す家族構成員もいなかった。この変異は既に数家系報告されており、白人では最も頻度の高い変異の一つと考えられる。本邦においても同一の変異が発見され、人種を超えた変異の存在のみならず、臨床像の相似性も確認された。また、これまでに報告されているβ-MHC遺伝子変異は、ほとんどが点突然変異で1塩基置換である。今回新たに発見された第3エクソンの第10コドンGGGの欠失はグリシンの欠失である。1個のアミノ酸の欠失は白人のHCM家系でも報告はなく、本邦において初めて発見された変異である。この変異は血縁関係の可能性の極めて低い複数家系で確認されており、本邦では高頻度にみられる変異であると考えられる。 β-MHC遺伝子に連鎖を認めない家系の存在が白人のみならず東洋人でも報告されている。我々の結果でも大半の症例で心筋β-MHC遺伝子の変異を証明できず、本疾患が遺伝的に均一ではないことが示唆された。また、これまでに第14染色体上以外の遺伝子マーカーとの連鎖が報告されているが、これらの遺伝子座における変異、原因遺伝子の同定は未だなされていない。HCMにおける遺伝子異常は極めて多彩であり、今後の解析によりβ-MHC遺伝子以外の病因遺伝子が明らかにされると考えられる。β-MHCの遺伝子解析はHCM患者の予後の判定を可能にする。しかし、現時点では心肥大を予防しうる有効な治療法は確立されておらず、疾患の発症予防に繋がる研究が急務である。
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