変動磁場を暴露した場合の生体組織内の誘導起電力を血液を対象として測定した。誘導起電力の分布は容器周辺部が大きく、容器の中心部に向かうに従い、小さくなった。誘導起電力は磁束密度および周波数に依存した。この分布様式はヘパリン加動脈血、血漿、血球沈渣成分、生食水でも同様であった。誘導起電力の大きさは血漿、ヘパリン加動脈血、血球沈渣成分の順であった。この起電力は媒質のインピ-ダンスに依存することがわかった。この研究成果は第6回日本生体磁気学会、1991年度World Congress On Medical Physics And Biomedical Engineering(Kyoto)および第19回日本歯科麻酔学会において発表した。この誘導起電力はマックスウエルの方程式に従えば伝導電流と変位電流から構成されていると考えられる。血液内での伝導電流は電解質などのイオンの移動によって発生しており、変位電流は血球や水などの絶縁物質に起因していると考えられる。そこで生体組織中の伝導電流、変位電流を観測するために血液に周波数7Hzから30MHzまでの交流電流を通電し、血液インピ-ダンスの変化を観察した。現在のところ周波数の増加に伴って血液インピ-ダンスと印加電流と血液内起電力の位相に変化が現れることを観測している。なお媒質ごとの等価回路を設定し、血液インピ-ダンスの正確な計測を試みている。今後得られたデ-タから変動磁場曝磁下の血液内誘導起電力の伝導電流、変位電流の解析を行う予定である。
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