研究概要 |
本研究は,成長期にある患者の中で、正貌で非対称が認められるか,あるいは顎偏位を増悪させると考えられる咬合関係を有するものに対して、コンピュ-タ-アキシオグラフを用いて,下顎運動,顆頭の限界運動を解析し,またセファログラムの分析,模型の咬合器マウントも併せて行い,このような患者がどのような形態学的特徴,ならびに機能的な特徴を有するのか,またそれらがどのような関連性を有しているのかを明らかにすることにある。また、咬合関係を改善することでどのように顎態、下顎運動が変化していくのかを明らかにすることで、今後の臨床診断、治療法に役立たせようとするものである。 現在までに顎偏位症例50数例について初診時の資料を採得した。その結果、顎偏位症例の顎偏位度と左右顆頭運動の関係については次の点が明らかになった。すなわち、下顎偏位度と下顎前方運動時における左右顆頭の運動経路との間には、1.偏位側顆頭の運動距離は非偏位側顆頭の運動距離よりも大きく,しかも下顎偏位度の増大に伴いその差がより大きくなる傾向がある。2.矢状顆路角左右差は、運動の初期に偏位側の矢状顆路角が非偏位側の矢状顆路角よりも大きく,下顎偏位度が増大するにつれ矢状顆路角左右差も大きくなる傾向にあるが,顆頭が前方に移動するにつれその左右差は消失する傾向にある。3.偏位側顆路の湾曲度は、非偏位側顆路の湾よりも大きく,偏位度が増すにつれ湾曲度左右差も大きくなる傾向にある。しかし、顎偏位患者でもすべてが同じような形態学的特徴を有するものではなく,また顆頭運動でも同一のパタ-ンを示してはおらず、すべての症例を一律に論ずることは難しい点も明らかとなった。
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