アルフア2プラスミンインヒビタ-(PI)のcDNAをpSV2ベクタ-に押入し発現ベクタ-を構築した。PI欠損の1家系にみられた3塩基欠損の見出された領域を含んだ制限酵素断片をM13に押入し、Kunkelのsiteーdirected mutagemesisの方法に從って、変異部位の周辺に種々の変異を作成し、dideoxy法によってシ-クエンスを行ない変異の有無を確認した。変異のかゝった断片を元の発現ベクタ-に組み込み、これらプラスミドDNAをCOS7細胞にトランスフェクション法にて導入し、発現実験を行った。細胞培養20時間後に、細胞抽出液および培養上清中のPIをELISAで測定し、またノ-ザンブロットで転写レベルを比較した。作成した変異ベクタ-は、合計30種に及んだ。もとのアミノ酸欠損部位を、他の種々のアミノ酸に置換した場合、発現量の低下はみられなかったが、培養上清中への分泌は、いずれも30ー50%の低下が見られた。置換したアミノ酸の疎水性や電荷と、分泌量との間には、何らの相関関係がみられなかった。次で、もとのアミノ酸欠損部位と異った部位にアミノ酸欠損を起こさせ、その影響を見た。すなわち、もとの欠損部位よりC末側に2アミノ酸づゝずれた位置にアミノ酸欠損を起こさせると、もとの欠損部位からの距離が遠くなるほど分泌への影響が無くなることが認められた。しかし発現量には全く影響はみられなかった。N末側に部位をずらしてアミノ酸欠損を起させた場合には、現在迄しらべた範囲内では、発現量には全く変化がみられず、分泌量は、もとの欠損部位より新しい欠損部位が遠くなるほど若干の回復傾向が見られたが、C末側で見られたような著しい回復は、現在のところみられていない。さらに欠損部位をN末側に移動させて発現実験を行い、アミノ酸欠損による分泌量低下が、どの範囲の領域のアミノ酸欠損によって起るものかを決定する。
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