研究概要 |
最終年度はZrO_2-Y_2O_3系およびZrO_2-TiO_2-Y_2O_3系の薄膜をエキシマーレーザーCVDの手法を用いて作製する研究を行った。薄膜作製には同和鉱業株式会社製Zr,Yのジピバロイルメタル塩(dpm),Zr(dpm)_4,Y(dpm)_3とTi(dpm)_2(O・C_3H_7)_2のMO原料を用いた。dpm化合物は昇華温度が低く,C,H,Oのみから成り立っているので塩素などの有害ガスを排出しないという特長があり,この化合物を原料に用いた。原料の温度と昇華量の関係は熱重量分析装置を用いて明らかにした。このデータをもとに始めにZr(dpm)_4を200℃,Y(dpm)_3を120℃およびTi(dpm)_2(O・C_3H_7)_2を60℃とし,薄膜の組成化を変化させるためそれぞれのMO原料の温度を変化させた。キャリアガスとしてArガスを20〜30cc/minの割合で流した。原料が途中で固化しないように反応槽への導入管にリボンヒータを巻き,昇華槽の温度より10℃程度高めに温度を設定した。基板はエキシマーレーザーの入射光に対した斜に設置し,ヒーターを用いて700℃に加熱した。レーザーとしては波長193nmのArFエキシマーレーザーを用いた。酸化物の薄膜を作製するので反応槽内に酸素ガスを150cc/minの割合で流した。薄膜作製時の圧力は反応槽内をロータリーポンプで排気しながら200Pa程度に保った。基板には(100)面がでているSiの単結晶,Al_2O_3のC軸配向している単結晶および焼結体を用いた。作製した薄膜の表面及び破断面をSEMで観察した結果,CVD特有の柱状に成長した緻密な膜が得られていることがわかった。X線回折の結果から配向性の基板を用いることにより配向性のイオン導電性薄膜が得られることがわかった。交流インピーダンス法を用いた電気伝導度測定から作製したイオン導電性薄膜は高いイオン伝導度をもつことが明らかになった。本研究の遂行により,イオン導電性薄膜の創製のための基本的手法が確立された。
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