研究分担者 |
鬼頭 義次 国立循環器病センター病院, 心臓外科, 部長
阿久津 哲造 テルモ株式会社, 研究開発センター, 所長
赤城 治彦 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室員 (90231802)
中谷 武嗣 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室長 (60155752)
妙中 義之 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室長 (00142183)
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研究概要 |
昨年度の検討で,流入出部に配したプッシャープレイト型人工心臓間に円柱型人工肺(ガス交換膜面積0.8m^2)を組み込んだ一体型心肺補助装置を設計・試作を行い,in vitro及びex vivoの潅流実験にて基礎的性能評価を行った.結果,試作器はポンプ特性では満足すべき性能を示したが,ガス交換能および圧力損失では目標性能を大きく下回り,人工肺部を中心とした抜本的な改良が必要と考えられた.そこで本年度は,1)ガス交換膜の変更,2)中空糸配列の再検討,3)ガス交換膜面積の増大を行い,加えて4)デバイス内面の抗血栓性処理法の基礎的検討に着手した即ち,1)ガス交換膜:昨年度の三層構造膜はガス透過性に難点があったため,新規なポリオレフィン膜(多孔質膜の微小孔を血液接触面でのみ封じた二層構造膜)に変更してガス交換能の向上を図り,2)中空糸配列:一層ごとに中空糸走行を直交させた昨年度の井桁状配列は,圧力損失を大きくする原因となったため,一方向性配列に改め,3)膜面積:ガス交換能の不足を補う目的で,ガス交換膜面積を昨年の1.25倍の1.0m^2に増大させた.これらの変更を加えた改良型試作器を作製し,ex vivoの潅流実験で再評価を行った.結果,改良型試作器のガス交換能は,血流量1L/min当たりで酸素40ml/min,炭酸ガス30ml/minであり,昨年度の1.3倍に向上した.また人工肺部での圧力損失は,血流量1L/min当たりで約10mmHgと昨年度の1/5以下に抑えることができた.本年度新たに着手した抗血栓性処理に関しては,材料表面にヘパリン分子を共有結合する方法を採用し,家兎を用いてのin vivoでの抗血栓性の評価を行った.本法にて表面処理したポリプロピレン糸は,2週間の頚静脈内留置にても血栓の付着を認めず,非処理糸に比べて良好な抗血栓性を示した.来年度は,今年度の検討結果を踏まえ,抗血栓性を含めたシステムとしての完成を目指す予定である.
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