研究概要 |
平成3年度の研究計画は、備品の納入が8月末(新製品のため多少の遅れが出た)になり、研究代表者(熊本)が9月から10月にかけて海外出張したため、事実上のスタ-トが10月末となった。また当初の申請に比べて金額が大幅に削減されたため,大学院生等のアルバイトに支払う謝金を削除した結果,実質上研究代表者個人の研究作業に計画を縮小せざるを得ない状態となった。このような条件のもとに、本概要執筆時(平成4年2月末)までの研究状況は以下の如くである。 1.コ-タン語写本のマイグロフィルム複製及び写真版資料から、比較的正確に年代を特定できるものを、出土地の考古学的調査の結果や解読されたテクストの内容等の研究成果に基いて抽出する。 2.およそ一世紀に一点を基準に、各時代の代表となる写本を全体として数点選ぶ。 現時点において,コ-タン語の現存全写本中最も古いタイプの文字をもつと判明したのは、インディア・オフィス・ライブラリ(IOL=大英図書館の一部)所蔵の木板文書一点である。これに次ぐものとして、同じくIOL所蔵の木函文書と、大英図書館東洋写本部及び新彊ウイグル自治区博物館所蔵の類似した外形の二、三の木函文書があり、これらは5ー6世紀のものと考えられる。紙文書については、字体と内容の点から、コ-タン周辺の遺跡が出土した断片類の年代を8ー9世紙初頭と推定できる。敦煌出土の多量の文書類の中で、最も初期のものは880年代、最も後期のもので比較的丁寧に書かれたものに、980年頃ないしは1000年頃まで、と 認めらりる写本がある。 これらの各時代の代表的な写本について、個々の文字の細部の特微を分析し、一般的な時代的分類の手がかりを得ることが、平成4年度の研究の課題である。
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