研究概要 |
ミュオン触媒核融合サイクルで[(dtmu)-d]ee、[(ddmu)-d]eeという6粒子系分子の生成が大切な役割を果たす。この中のdtmu、ddmuは一つの小さな分子と見なせるが、それの振動回転状態は(1,1)のものが始めできやすいことが知られている。これがより低い振動回転状態に遷移した後にdt核融合が起こるわけであるが、その遷移で放出されるエネルギーが一つの電子に与えられてオージェ電子として飛び出す、オージェ過程のレートが問題になるのでこれを計算した。6体問題を扱うことと、それの簡単化された4体問題、dtmue、ddmueを扱うことと両方を行った。従来の計算はごく簡単な終状態波動関数を使っており、信頼性が明らかではなかったが、今回、精度の高い連続状態波動関数を用いて計算したところ、dtmuについては従来の値がそれほど悪くはないことが証明された。ddmuについては信頼性の低い計算値しかなかったので、今回の結果は重要である。 「ヤコビ座標ガウス型基底関数を用いる3体系組替えチャネル結合法」では、基底関数は動径座標のべき、ガウス関数、球面調和関数の積によって表され、3体系ハミルトニアンの行列要素を計算する際、面倒なラカー代数が登場する。そこで、多原子分子の電子軌道に関するクーロン交換積分を容易にするために導入された Gaussian-Lobe基底関数を、原子核、ミュオン分子、通常の原子の3体、4体問題の精密計算に利用できるように、改良を行った。行列要素の数値計算に先だって、shift parameterに関する計算をすべて済ませてストアすることができるので、この後に必要な計算は極く僅かとなり、計算時間が非常に短くなる。また、軌道角運動量に関するラカー代数が一切不用になり、従来複雑であった4体系あるいは複雑な非中心力のある3体系の手計算部分がこの方法により非常に簡単になる。この方法が、ミュオン分子dtmuの精密計算で完璧に働くことを確かめた。
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