研究概要 |
dtμ、ddμ分子の共鳴凖位への補正:ミュオン触媒核融合(以下μCF)で中心的な役割を演ずるdtμ、ddμ分子の生成確率を決める重要な要素の一つがこれらのエネルギー凖位で、高精度が要求されるため、非相対論的3体問題による値に諸諸の補正が必要である。この3体系が実は6体系分子の中に存在するための補正を、従来取り入れられていなかったdtμ、ddμの4重極モーメントの効果を入れ、従来より1桁大きい2meV程度の値を得た。ddμにつき見られていた理論と実験の一致は見かけのものにすぎないことがわかり、その傍証も得られた。 ミュオン移行反応:dμ+t→tμ+d,pμ+t→tμ+p,dμ+He→Heμ+dなどの、μCFサイクル中で重要なミュオン移行反応を、ヤコビ座標系による正しい境界条件もとに、3体系非断熱組替えチャネル法に差分法を組み合わせて精密に解いた。D_2-T_2系にH_2(水素分子)を多量に入れて、H_2/D_2/T_2の三重混合系にすればサイクルをずっと速く回すことが出来るという興味ある提案があるが、pμ+d→dμ+p+135 eVにより生成された高速のdμが、dμ+t→tμ+dの断面積を従来考えられていたより100倍ほど増大させることが確証された。 ミュオン分子の崩壊形態の研究:D_2+T_2系、D_2+T_2+H_2系において、Tのベータ崩壊によりHeが発生する。これへのミュオン移行はサイクル数を減らすのでその研究が肝要である。dμ+He衝突については、dμ+He→(dHeμ)→Heμ+d+X線(〜8keV)との中間状態を経るが、これに関連した理研グループのX線測定結果を説明する計算として、分子内核融合の反応率の計算を組替えチャネル結合変分法を使って行った。 その他、Infinitesimally-Separated Gaussian-Lobe基底関数系を用いた3体問題の解法の開発、準安定ミュオン分子イオンdtμの性質の研究、およびdtμ、ddμ波動関数の漸近形の重要性に関する研究を行った。
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