熱帯熱源に関する4つの問題について、球面上のプリミティブ方程式に基づく数値モデルを用いて探求した。モデルの熱源はいずれも外部強制として与えている。 第一の問題は定常熱源のもとでの非定常性の役割を明らかにすることで、そのため時間積分モデルと定常モデルを構築し、両者の性質の違いを調べた。定常解が不安定となるパラメータ領域では、両モデルの結果は特に偏差場において顕著な違いを示す。すなわち時間積分解の方が定常解より大きな振幅の波列を持つ。さらに熱帯から出た波列は中緯度を経由し、また熱帯へと戻ることによって、励起源から離れた場所での振幅を大きくする。 次に季節内振動における熱帯-中緯度間相互作用の役割を調べた。このモデルにおける熱源は60Eから180゚へ40日の周期で移動する。まず中緯度との相互作用がない場合(中緯度の帯状流が弱い場合)には季節内振動の振幅は120Eを中心とする励起源の場所でのみ大きい。一方、中緯度での偏西風が強くなると、熱帯から出た波列が中緯度を経由し、再び熱帯へ戻って来るという熱帯-中緯度間相互作用が生じる。そして波列の収束する場所、すなわち励起源から遠く離れた西半球においても季節内振動の振幅は強くなる。 同じモデルから季節内振動に伴う大気角運動量の変動を調べた。その結果、季節内振動に伴う角運動量のソースは赤道付近になく亜熱帯にあり、赤道域へは角運動量が輸送されて、見かけ上のソースとなっていることが分かった。またこの角運動量の獲得と輸送は主にロスビー波束によっていることも明らかにされた。 最後に成層圏ケルビン波が西半球の対流圏季節内振動から励起されるのではないかという立場から数値実験を行った。これについては今のところ肯定的な結果を得ていない。
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