研究概要 |
1.本補助金(平成3年度)により改良したレーザー励起過渡吸収スペクトル測定装置を用い、引続き水/Aerosol OT(AOT)/イソオクタン逆ミセル中へのピレン系蛍光色素の可溶化状態の研究を行った。 (1)ピレンスルホン酸(PSA)塩の場合:水溶液および逆ミセル溶液のレーザー(XeF、351nm)照射後に生じた過渡的化学種の吸収スペクトルとその時間変化の解析から、PSAは少なくとも逆ミセルのwater poolol中と界面活性剤疏水性部分の二箇所に可溶化していることがわかった(発表論文)。それら過渡的化学種の減衰挙動をクエンチャー効果などを考慮して詳細に検討し、両可溶化状態についてその分布比を求め、可溶化サイト間の交換の可能性を示した(投稿準備中)。 (2)8-アセトキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸(APTS)塩の場合:PSAより親水性の高いAPTSの可溶化を同様の方法により調べた。APTSはPSAと異なり水溶液中でレーザー照射によりAPTS^+・APTS二量体カチオンラヂカルが生成し500nmに強い過渡吸収を与える。このカチオンは逆ミセル中ではほとんど検出されなかった。この結果は、APTSがwater pool中の自由水部分に二個可溶化することが稀であることを示唆する。また、APTSのような親水性分子は小さな逆ミセル(water pool)にはほとんど溶けない(投稿準備中)。 2.1の研究からピレン化合物の逆ミセル中への可溶化がwater poolの大きさと周囲環境、および溶質分子の極性に強く依存することが明らかになった。この依存性は小さなwater pool中の分子と分子ビーム法により得られる水和クラスターとの単純な関連性を否定するものであり、その理解にはもう少し時間がかりそうである。分子ビーム法による水和クラスターの生成については残念ながらまだ十分なサイズのものが得られておらず、引続き装置の改良を行っていきたい。
|