研究概要 |
一般にWilkinson錯体触媒による接触水素化では、不均一系接触水素化で触媒毒となるS原子を含む有機化合物も水素化されることが一つの大きな特徴とされている。しかし、4ーチオクロモン(1)および4ーチオクロモンー1,1ージオキシド誘導体(2)について、Wilkinson触媒による接触水素化を試みた結果、1はほとんど水素化されないことが確められた。 しかし、1のーSーをSO_2ーに変えた2は水素化され、それぞれ相当する4ーチオクロマノンー1,1ージオキシド(3)を殆ど定量的に生成することが分かった。なお、2d(R_1=R_2=CH_3)のWikinson触媒による水素化では3dのcis体とtrans体の約1:1の混合物を生成した。このことは、2dの水素化はc=c結合に2ケの水素原子が同時に付加するのではなく、段階的に付加することを示している。水素は1,2付加とは限らず,4付加することも考えられるのでさらに検討する必要がある。 なお、3ーベンジリデンー4ーチオクロマノン誘導体(4,5)のWilkinson触媒による水素化についての実験も進めており、4はほとんど水素化されず原料回収に終ることが分かった。
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