研究概要 |
近年環境指標として いろんな生物がとりあげられるようになった。土壌動物もその対象となることがあるが その取扱いの単位は しばしば科や目(Order)など高次の分類単位で種には及ばないので はたして指標としての意味をもたせうるかどうか うたがわしい。ある生物群ではどれほどの種がすみついており どのような条件のところで どの程度の頻度でみいだされるか? この単純な貭問に答えるだけの基礎情報が集積されねばならない。 草木のあるところ,どこの土の中にもいるカマアシムシ類(Protura)とよばれる 体長1ミリ内外の小さな虫がいる。きわめて特異な性貭をそなえ 節足動物の系統上 孤立した一群で,まだ調査のゆきとどかぬ地域もあるが 世界中で既知550種余,日本とその周辺では,かなり調査がすすんでおり 56種がしられている。本研究者とその協力者によって 日本列島での踏査地点は2800をこえ,たんに各点での種ごとの情報だけでなく,種構成と植生,標高,暖かさの指数 各種の令構成などの基礎情報が集積されてきた。本年度も情報の整理のかたわら 北海道や南西諸島(宮古島 石垣島)での新規の調査をすすめて 現時点で約170地点からの新情報のとりまとめをおわり 近く刊行の予定である(Imaeate&Ohnishi,in press)。また蓄積された約4万個体の資料のなかには 分類学上の位置を検討中のものがふくまくれているが 最近そのうちの二三は新種とみなしてよいとの結論にたっしたので 本研究者がそれらの記載の発表を準備中である。 これからさらに一両年の調査を加えて 日本列島内の踏査点を3000として 基礎情報の総括的整理ととりまとめに入るのが 本研究者の当面の目標である。
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