昆虫は季節情報としての光周情報を、日長感受性のある発育時期に受け止め、光周性反応を示す。昆虫の光周性反応に関与する器官は、一般的に脳(protocerebruum ganglion)であることが知られているので、脳のどのような部位の細胞(群)が、いかなる仕組みで光周期を受容し、日長情報を蓄積するのか、そして最終的にホルモン分泌制御を担っているのかを知るために、マイクロレ-ザ-メスを用いた。N_2レ-ザ-発振機(レ-ザ-ヘッド)を当初計画通り購入し、ビ-ムが効率よく検体に照射されるように光学系を構築した。光学系としては発振ビ-ムを顕微鏡の胴鏡部の穴に照射し光軸方向に垂直に落射して対物レンズで収束させ、カバ-グラス上のサンプルに照射する方法と、顕微鏡を使用せず、反射鏡と石英レンズで収束照射させる方法の両面から検討中した。いずれの方法でも金属プラズマを発生させ、昆虫の神経球の表面に肉眼で明らかな破壊痕跡を認めるに足るだけのエネルギ-が照射焦点で得られるが、前者では照射面積が小さくなり過ぎて、部位の同定が困難となるため、当面は反射鏡と石英レンズを用いる方法と取った。まず、カイコの休眠現象に着目して蛹期に効果器の存在する食道下神経球への照射を試みた結果、神経球の後方3分の1への照射によって、休眠ホルモンの分泌が完全に停止した。エネルギ-とショット数をぞうかさせればさせるほど効果は増大した。一方脳への照射は、現在実験が進行中であるが、休眠卵蛹においては特に効果見られず、申請者らのホルモンの抑制制御説を支持する結果がえられた。光周反応感受期である幼虫期の脳にも同様の操作を加えようと試みているが、特異的部位へのショットが困難で、試行錯誤している。
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