まず、カイコの光周反応のエフェクターが存在する食道下神経球(SG)のレーザー光照射をこころみた。材料は休眠卵産生蛹D-Pの脳(Br)-SG連合をとりだし硝子プレート上に置き、昆虫リンゲルを一滴落として処理中に乾かないようにして照射した。照射は、5shot/secで30秒間とした。照射してからしばらくして、組織に泡のようなものが発生してくるのが観察された。これは、細胞内と細胞外にある水分にレーザーの吸収が生じて水が沸騰し、それにより膨張した細胞が破裂下ためと考えられる。即ちは組織内にたまった水蒸気は気泡を形成しその内圧の上昇によって気泡は破裂し四方に飛び散る蒸散現象が観察された。泡がなくなると、肉眼では組織の変化は分からなくなるが、ガラスプレート上でサンプルを乾燥させるとダメージのあった部分が拡大された穴が観察された。SGへの照射については神経分泌細胞(NSC)が存在する中間部の照射によって休眠卵産生率は0となり、これによりレーザー照射の有効性が確認された。NSC以外の部位の照射はとくに効果は見られなかった。どれだけの深さまでダメージが及んでいるかは今後、切片の組織学的検索を必要とするが、SGのNSCはsheathのすぐ下、即ち表面から比較的浅い部分にあるので効果がでたものと推定される。Brへの照射実験は例数が少ないので、まだ明確な結論に至っていないが予備的実験によると、非休眠卵産生蛹ND-Pでは、protocerebralの前半部を破壊することにより、この部位に抑制的中心が存在することが予想された。D-Pでは今のところ効果は見られない。今後、データーを増やして総合的に考察する必要がある。
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