研究概要 |
火山岩中のリン灰石をはじめとする含水鉱物および石基ガラス中のハロゲンとS含有量を調べるために,中部山岳地域の白馬火山の風次岳溶岩ド-ムと山陰地域の大江高山溶岩ド-ムの岩石試料を収集した。また,今年度の研究の途中で活動が始まった雲仙岳溶岩ド-ムの試料も検討した。雲仙岳1991溶岩ド-ムは,白馬風吹岳と大江高山のそれらと良く頼似した石英安山岩質の発泡した溶岩を生じた。雲仙岳1991溶岩ド-ム試料についても,リン灰石および石基ガラスの分析を行った。 白馬風吹岳溶岩ド-ムでは,早期に噴出して火砕流を生じた石英安山岩は良く発泡して気泡を生じている。Cl含有量は650ー150ppm程度で比較的高い。S含有量は40ppm以下である。Fは検出限界(200ppm)以下である。これに対して,後期に噴出した安山岩質溶岩ではClが200ppm以下と低く,SとFは比較的高い。前者の場合にはClが閉鎖系で脱ガスしたのに対して後者では異ったメカニズムで脱ガスしたことを示している。 大江高山溶岩ド-ムをつくる石英安山岩のリン灰石について,F,ClおよびLREE(La,Ce)を分析した。斑晶のリン灰石に比べて石基のリン灰石はLREEがやや低く、石基リン灰石のうちにはClが著しく低下していてLREEの高いものがある。この結果はマグマの脱ガスが火道をゆっくリ上昇する途中で起ったことを示している。 雲仙岳1991溶岩ド-ムの石英安山岩中のリン灰石は,Cl含有量が斑晶(0.81ー1.3wt%)と石基(0.57ー1.1wt%)とであまり差がない。また,石基ガラス中のClは比較的高くほぼ600〜200ppmの範囲を示す。これは,マグマが火道上昇前および途中で多量のClを失うような脱ガスをしていなかったことを示している。
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