研究概要 |
本研究の目的は,作業環境中の石綿繊維濃度を画像処理の手法を用いて自動計数するシステムを基礎として,一般大気中の石綿繊維濃度の測定を行うシステムを開発することである。 一般大気を対象とするうえで重要なことは試料の作成方法であり,従来から使用されているメンブランフィルタ法(以下従来法)には,種々の問題点がある。本研究では、これらの諸問題を解決する一方法としてカスケ-ドインパクタ法(以下インパクタ法)を採用した。インパクタ法には以下のような特徴がある。(1)フィルタ強度の問題がないため多量の空気流量が設定できる。(2)適用の分離径を設定することにより微小粒くを補集しない。(3)熱処理等の前処理が可能。(4)小さな面積に対象物を集められ,面密度の高い試料が得られる。 今回は4段のインパクタ補集装置を用い補集空気流量は従来法の4倍の40l/min,ノズル分離径を各々約0.5μm,試料としてのろ過石積は従来法の約1/10とした。クリソタイル,ガラス繊維を超音波により分散させた懸濁液を噴霧させるエアロゾル発生器を用い幕,試料粉じんを供給し,また大気を直接吸引することによりインパクタの補集効率を測定した。その結果,各々について4段合わせて約94%となった。前処理として,熱処理,酸処理,アルカリ処理を行って各々の効果をみた。熱処理は450℃1時間加熱を行い合成繊維(テトロン等),天然繊維(綿等)は消滅した。酸処理には塩酸を,アルカリ処理には水酸化ナトリウムを用いた。 肉眼計数とのクロスチェックは,従来から行われている計数値による比較にとどまらず,繊維状物質に対する石綿繊維を同定をも行ったが,個人差が多いことが確認できた。 今後は,WSの使用も含めて処理速度についても考えていきたい。
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