イネ葯培養由来のカルス内には、ヘアピン末端を有する線状欠失色素体DNAが存在する。この様な欠失DNAが正常なゲノムを有する種子由来カルスの色素体にも存在するかどうかを検討した。1次元目を通常のTAE緩衝液で、2次元目をアルカリ変性条件下でアガロース電気泳動を行い、サザンハイブリダイゼイションで色素体DNAの泳動位置を確認したところ、ほとんどのDNA分子は、1次元目と2次元目間でサイズを異にすることがなかった。しかし、一部の分子群は2次元目では1次元目での分子サイズに比べ、2倍のサイズとなる位置に移動された。また、同様の結果が緑葉の葉緑体においても観察されたことから、正常なゲノムを有する色素体や葉緑体内には末端の一方がヘアピンで閉じた線状分子種が存在しているものと判断された。 種子由来カルスおよび緑葉からの全DNAのパルスフィールド電気泳動を行ったところ、イネ葉緑体のゲノムサイズ(135kb)を基本とする単量体から5量体までの分子種が確認された。この様な結果は、ヘアピン末端を有する線状欠失色素体DNAが、Head-to-Head、Tail-to-Tailの様式で連結した多量体を構成している事実と類似する。以上の結果から、正常な葉緑体DNAもヘアピン末端を有する線状分子である可能性が高い。現在、この点を明らかにするため、パルスフィールドと2次元の電気泳動を組み合わせた実験を進めている。
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