多収性水稲として、南京11号、水原256号、比較品種として日本晴を供試し、主茎について登熟期サンプリングを行った。現在、乾物重、窒素含量の分析が終了した。今後、炭水化物含量、茎、葉鞘において蓄積炭水化物の分解に関係する酵素群、穂において転流されてきた炭水化物のデンプン合成に関与する酵素群の測定を行うが、現在までに得られた結果は次の通りである。 1。1穂重は、1穂穎花数の多かった南京が最も重く、ついで水原、日本晴であった。しかし、登熟期間の乾物増加量には品種間で大きな違いはなく、穂重の違いは他器官からの再転硫量の違い、あるいは、光合成産物の分配率の違いによってもたらされていた。 2。登熟歩合は水原、日本晴は75%程度であったのにたいし、南京は60%と低かった。登熟期間における1穂重の推移を見ると南京は登熟初期の増加速度が最も速いが、その後急に低下する。一方、日本晴では、乾物増加が停止する出穂後25日までほぼ一定速度で増加した。水原は登熟中期から、増加速度が低下するが停止はせず徐々に乾物を蓄積していった。南京と水原の違いは、二次枝梗着生穎果の発育が、水原では一次枝梗着生穎果の乾物増加停止後引き続いて行われるが、南京ではすでに発育能力を失っているためと観察された。 3。穂の窒素集積が主として行われた、出穂後4週間における、他の器官からの窒素の転流量は、南京が最も多く、ついで日本晴、水原の順であった。 以上の結果から、一穂穎花数の多い南京、水原であっても、穂への炭水化物・窒素の転流の時期的推移には違いが見られ、これは、一次枝梗と二次枝梗の発育パタ-ンの違いに起因する可能性がある。
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