多収性水稲として、南京11号、水原256号、比較品種として日本晴を供試し、主茎について、調査した。現在すべての分析が終わっていないため、すでに得られた、乾物と窒素の転流の品種間差についての概要を以下に記す。 1。収穫時におけるモミ・ワラ比は、南京11号、水原256号、日本晴でそれぞれ1.74、1.42、0.822であり、1穂頴花数の順と同じであった。 2。登熟期間は南京11号が他の品種より1週間以上短く、短時間に多量の乾物が穂に蓄積された。それを供給するため、茎葉とくに茎から乾物が再転流された。その量は出穂時の茎重の40%以上であった。 3。窒素に関しても、収穫時におけるモミ・ワラに含まれる量比は、南京11号、水原256号、日本晴でそれぞれ4.39、2.31、1.45と乾物重以上に大きな品種間差が存在した。 4。南京11号において、以上のように大量の窒素をしかも短期間に穂に蓄積するため、葉および茎からの再転流量はかなり多く、しかも、他の2品種では出穂後2週目以降から起こったのに対し、南京では出穂後直ちに再転流が生じていた。また、本研究では地下部の調査は行なわなかったが、地上部の窒素増加量から判断すると、地下部からの再転流もかなりあることが推察された。 5。南京11号で出穂後、葉から大量の窒素が再転流した結果、葉の光合成能力が低下し、出穂期の比較的近い日本晴と比べ、乾物生産量は約半分と非常に低くなった。
|