青果物のエチレン生成の誘導機構を電流刺激法を用いて解析した。 1.定電流装置をマイクロコンピュ-タを用いて作成し、電流の種類によるエチレン誘導能力を調べたところ、直流電流が最も有効であった。青果物の種類により電流に対する反応が異なり、非クライマクテリック型の青果物では強力にエチレンが誘導されたが、クライマクテリック型果実では抑制される傾向がみられた。 2.イオン交換クロマトグラフィ-による全く新しいACCの簡便な分析方法を開発した。 3.キュウリ果実では、通電によりラグタイムなしに多量のエチレン生成が誘導され、その後一度低下して8〜12時間後から再び多量のエチレン生成が始まった。ACC合成酵素活性の変化様相はエチレン生成の変化様相とよく一致していた。エチレン生成酵素は2度目のエチレン生成時に急速に活性化された。したがって、通電によるエチレン生成の誘導は、ACC合成酵素の急速なde novo合成によると思われた。 4.キュウリの通電に伴う生体膜機能変化をインピ-ダンス解析法により追跡し、膜タンパク低抗が著しく増加し、しかもエチレン及びACC合成酵素活性の増加様相と完全に一致することを認めた。したがッて、エチレン生成誘導の初期反応は、膜タンパクの機能変化、とくに膜チャンネルの閉鎖にあることが示唆された。 5.原形質膜及びトノプラストのミクロゾ-ム調製物の膜機能変化を調べたところ、通電によりプロトンポンプ活性が著しく抑制され、インピ-ダンス解析による膜チャンネル閉鎖結果とよく一致していた。 6.本研究補助によりエチレン生成は膜チャンネルの閉鎖により誘導されるという重要な新知見を得た。今後、通電以外のエチレン生成についても研究を進め、植物のエチレン生成機構の全貌を明らかにしたい。
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