研究概要 |
前年度、我々のグループで単離した細菌のα(1-2)マンノシダーゼを使用して,α(1-2)結合のマンノオリゴ糖の調製が可能であることを示した。今年度は、N-グリコシド型糖鎖のコア構造に必須であるα(1-3)マンノシド結合のオリゴ糖を調製することを目的とした。まずα(1-3)マンノシダーゼあるいはマンナナダーゼを天然界から得ることを試みた。α(1-3)マンノシダーゼは,現在未知の酵素であり、それに関する報告は皆無である。最初にα(1-3)マンノシダーゼ生産菌を土壌中から得る目的で,キクラゲより調製したヘテロ多糖(キシロ・グルクロノマンナン)をスミス分解して,α(1-3)マンナンを調製した。これを基質として,上記酵素生産菌をスクリーニングしたところ,3株の細菌が得られた。その中の一株、AS-9株(グラム陰性細菌,極べん毛)の培養3液より,DEAE-トヨパールクロマトグラフィーを2回,トヨパールHW55Fによるゲルろ過を行い部分精製酵素を得た。(精製度13倍)本酵素はα(1-3)マンノシド結合をもつ多糖にのみ特異性を示し,他のマンノシド結合,すなわち、α(1-2),α(1-6)結合をもつ多糖には活性を示さなかった。本酵素のα(1-3)マンナン加水分解の至適温度は40℃,至適PHは7であり,二価の金属イオンに対しては水銀以外には影響をうけなかったが,EDTA(1mM)で80%の阻害を示した。本酵素のα(1-3)マンナンに対する作用様式は,分解物の経時的解析からエンド型と考えられ、α(1-3)マンナナーゼと考えられる。α(1-3)マンナン分解の最終産物はマンノビオースとマンノースであった。本研究の目的である高マンノース型オリゴ糖の調製法の確立ということからは,本酵素をα(1-3)マンナンに作用させ,反応中間産物である、α(1-3)マンノオリゴ糖を容易に調製できる点で,現在入手困難なα(1-3)マンノオリゴ糖を大量に供給できるめどがついたといえる。
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