研究概要 |
心筋細胞を伸展させた時、CI^ー電流が流れるか否かを検討するため、CI^ーチャネル遮断薬およびイオン選択性微小電極を用いて実験を行い、以下の成績を得た。コラゲナ-ゼを用いて分離したモルモット単一心室筋細胞を67%の浸透圧の低浸透圧液に曝すと、短径が9.4【plus-minus】1.3%、長径が1.1【plus-minus】0.2%、容積は21.1【plus-minus】3.1%増加した。また、摘出モルモット乳頭筋を細胞外K濃度を一定とし、67%の浸透圧の栄養液で潅流すると、活動電位持続時間が短縮すると共に、最大拡張期電位が減少し、静止張力が増加した。静止させた標本においても、この低浸透圧栄養液は静止膜電位を11.5【plus-minus】0.4mV脱分極させた。この低浸透圧性脱分極に対し4.4'ーdiisothiocyanato stilbene 2,2'disulfonic acid(DIDS,1mM)および4ーacetoamidoー4'ーisothiocyanato stilbene 2,2'ーdisulfonie acid(SITS,1mM)は有意の抑制作用を示したが、anthraceneー9ーcarboxylic acid(9AC,1mM)は影響を与えなかった。これに対し、1μMのisoproterenolで惹起される静止膜脱分極反応および細胞内Cl^ー活性(a^icl)の減少反応は9AC(1mM)によっては抑制されたが、DIDS(1mM)によっては抑制されなかった。モルモット乳頭筋標本を上記の低浸透圧液で潅流すると、細胞内K^+活性(a^iK)は134【plus-minus】9mMから99【plus-minus】8mMへと26【plus-minus】3%の減少を示したが、a^iclの減少度はa^ikの減少度より有意に大きく、24【plus-minus】2mMから13【plus-minus】2mMへと46【plus-minus】5%の減少を示した。これらの結果から、低浸透圧液により心筋細胞が膨化する際、DIDSおよびSITS感受性のCl^ー電流が流れ、静止膜電位の脱分極がおきたものと考えられ、虚血再潅流時の不整脈発現にも一部寄与する可能性が示唆された。
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