研究概要 |
平成3年度はRH株虫体及びそのIn vitro培養の無血清培地遠心上清より高速液体クロマトグラフィーを用いて、二種類のNTPaseアイソザイム(I,II)をそれぞれ精製した。平成4年度は酵素の基本的な性質を調べ、その応用について研究した。単一な酵素を用いてまず、基質であるATP及びADPに対する反応速度定数を測定して、アイソザイム間の酵素反応の違いを明らかにした。その結果、NTPase-IのATP及びADPに対するVmaxとKm値の比はそれぞれ150と0.12、NTPase-IIのそれは1.1と1であった。このことからNTPase-IはATPを優先的に分解するが、NTPase-IIの場合はATP,ADPともに同じように分解することが反応速度定数から確認できた。現在まで調べた限りNTPase-IIの酵素反応の性質は全ての株に共通に存在する。したがって血清診断用抗原としてはNTPase-IIが良いと考えられる。そこで、両酵素に対する抗体をウサギを用いて作製し、その抗原性の違いを調べた。二重拡散、中和試験、ウエスタンブロットの各法では両酵素の抗原の違いを明確にすることができなかった。すなわち両酵素には共通のエピトープが存在し、そこが主な抗原決定部位と思われる。このことはNTPaseを診断用抗原として用いる場合、トキソプラズマの株の違いによるアイソザイムの有無を考慮しなくても良いことが再確認された。また抗NTPase抗体が急性期に特異的に上昇することから、急性期特異虫体であるtachyzoiteに主に存在すると思われたので、このことを慢性感染期虫体brayzoiteとの比較で確認した。実際の臨床診断への応用については米国微生物学会誌(J.Clin.Microbiol.)の1992年5月号に掲載した。その他平成4年度の成果については現在投稿準備中である。
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