研究概要 |
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は難治性疾患である多発性硬化症の動物モデルであると共に臓器特異的自己免疫疾患の代表的モデルであり,自己免疫疾患の病困解明に大きく貢験してきた。EAEの発症機序に関しては,エフェクター細胞のクローニング等,格段に進歩したが,エフェクター細胞がいかにして中枢神経系に到達し,血液脳関門(BBB)の透過性を亢進させ,中枢神経系実質内において,浮腫,脱髄を来し,臨床神経症状を発現するかについては,まだ未解決である。本研究は,こうした発症段階に焦点をあて,殊に最近,免疫担当細胞あるいは様々な凝固一線溶系の調節作用を果たしていることが明かとなって来ている脳血管内皮細胞の炎症による影響と効果を,エフェクター細胞であるリンパ球,標的細胞であるオリゴデンドログリア細胞との連関でとらえようとした。その為,本研究では培養系を用い,ラットにおいて細胞移入による受身型EAEを作成した。またラット脳によりBowmanの方法により脳微小血管内皮細胞を分離し,コラーゲンシート上に脳血管内皮細胞を培養し,継代培養させることに成功し,培養系が樹立された。更にラット脳よりPercoll法によりオリゴデンドログリア細胞を分離し,ライン細胞を樹立した。加えてin vitroの系で,コラーゲンシート上に敷石状に培養した脳血管内皮細胞を用いて血液脳関門透過モデルを作成することができ,リンパ球-脳血管内皮細胞-オリゴデンドログリア細胞の相互作用をin vitroの系で検討することが出来た。今後,このin vitro血液脳関門透過モデルを用い,脳血管透過性を定量的に測定し,脳血管透過性に関与する因子,及びそれによる脳血管内皮細胞やオリゴデンドログリアの変化を定量的に追求する予定である。
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