研究概要 |
強力な血管平滑筋細胞増殖促進因子である血小板由来細胞増殖因子(PDGF)の情報伝達機構に蛋白質チロシンリン酸化反応が重要な役割を果たしている。私共は血管平滑筋細胞の肥大、増殖を促進するアンギオテンシンIIやエンドセリンなどの血管収縮物質の情報伝達機構にもチロシンリン酸化反応が関与することを見いだし、血管平滑筋細胞におけるチロシンリン酸化反応の研究を行ない以下の成果を収めている。1.血管平滑筋細胞においてPDGFはその受容体を含め少なくとも8種類の蛋白質のチロシンリン酸化反応を促進するがアンギオテンシンIIやエンドセリンなどの血管収縮物質もこれらの基質蛋白質のうち少なくとも5種類(79,77,73,45,40kDa)の蛋白質のチロシンリン酸化反応を促進する。2.細胞増殖因子活性化蛋白質キナ-ゼ(MAPキナ-ゼ)は各種細胞増殖因子の作用時にスレオニンとチロシン残基がリン酸化されて活性化され、細胞増殖因子のシグナルを細胞膜からリボゾ-ムや細胞核へ伝達するセリン/スレオニンキナ-ゼとして注目されているが、血管収縮物質によってチロシンリン酸化される45kDaと40kDaの蛋白質はいずれもMAPキナ-ゼであり、アンギオテンシンIIやエンドセリンの作用時には2種類のMAPキナ-ゼアイソザイムがチロシンリン酸化されて活性化される。3.血管収縮物質によるチロシンリン酸化反応とMAPキナ-ゼの活性化は情報伝達経路においてCキナ-ゼの活性化とCa^<2+>動員の下流に位置する。4.血管収縮物質はMAPキナ-ゼ活性化因子の活性化を介してMAPキナ-ゼを活性化する。5.発癌遺伝子cーrafの産物は細胞増殖因子シグナルを細胞膜から細胞核へ伝達するいま一つのセリン/スレオニンキナ-ゼとして注目されているが、MAPキナ-ゼはin vitroにおいてcーraf産物をリン酸化する。
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