雄性Wistar rat用いて一側腎動狭窄およびAVシャントによる心不全ラットを作成した。術後2週において十分な血圧の上昇が認められたためそれらを2群に分け、一方にACE阻害剤であるcaptoprilを1g/lの濃度にてfree drinkingで投与した。これは体重当りに換算すると100mg/kgに相当する。術後16週においてcaptopril投与群では未治療群に比べて、血圧、左室重量の有意な低下が認められた。心収縮力は左室乳頭筋を用いてTyroid液にて潅流しながら0.2Hzの電気刺激によるisometric contractionにて評価した。その結果active tensionは、有意差はなかったもののcaptopril群において改善傾向が認められた。発生張力に関する速度のパラメ-タ-である+dT/dtmaxおよび-dT/dtmaxはcaptoril群において同様に改善傾向が認められた。しかしその他のパラメ-タ-、すなわちtime peak tension、total contraction time、time to half relaxationに関しては差を認めなかった。左室myosin isoenzymeに関して、未治療群ではV3が優位であったが、治療群においてはV3の減少、およびV1の増加といった有意な変化を認め、captopril投与により正常ラットの構成比率に近づいた。しかし心筋の繊維化の指標であるhydroxprolineは未治療群とcaptopril群とにおいて差を認めなかった。 これらの結果より心不全モデルラットにおいて、captoprilを投与しangiotensin IIを抑制することによって心不全を予防することが可能であると思われた。なお研究計画では他の血管拡張剤との比較、ならびに細胞増殖面の評価として発癌遺伝子の測定を計画していたが、心不全ラットの死亡率が予想以上に高く、十分な匹数を得ることが困難であったため、preliminaryなstudyにとどまり有意差を得るところまでいかなかった。来年度においてprostaglandinでの前処置実験と合わせて今後検討したい。
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