研究概要 |
最近,ミトコンドリアDNAの異常が,遺伝的ミトコンドリアDNA異常症のみならず特発性心筋症においても認められたという報告がなされが,この異常が果たして本症の病因に直接関与しているのか否かは明かではない.我々は,これまでの臨床的および実験研究から,ミトコンドリアの異常,特にミトコンドリアDNAの欠失は,特発性心筋症においては病因的というより,むしろなんらかの二次的要因にて発生する可能性,さらにその発生要因としてフリーラジカルによるDNA傷害が関与している可能性を考えた. そこで今年度は,そのメカニズムをさらに明かにするために,あるいはミトコンドリアDNA障害に対する防御が可能であるかを検討するため,アドリアマイシン投与時にCoenzyme Q10を同時に投与し,ミトコンドリアDNA欠失およびミトコンドリア内の過酸化脂質量の動態を調べた.その結果, Coenzyme Q10を同時に投与すると欠失の発生頻度が減少し,その程度は Coenzyme Q10の濃度に関連していた.またそれと比例してミトコンドリア内の過酸化脂質量も減少していた.Coenzyme Q10は最近radical scavengerとしての役割が注目されており,この作用がアドリアマイシンによるミトコンドリアDNA障害に防御的に働いたものと考えられた。すなわちこのことは,心筋のミトコンドリアDNAの欠失の発生にフリーラジカルが大きく関与していることを示唆しているものと考えた.
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