研究概要 |
真皮の主成分であるI,III型コラ-ゲン遺伝子発現及びその代謝調節機構の解析として,本年度は,直接に病的組織の検討として著明にコラ-ゲン産生の亢進している限局性強皮症(モルフェア)の皮膚により培養した線維芽細胞のコラ-ゲン遺伝子発現を解析し、またその病態生理にコラ-ゲン代謝異常の関与が想像それる先天性皮膚弛緩症(cutis laxa)の皮膚線維芽細胞のコラ-ゲン、並びにその特異的分解酵素であるコラゲナ-ゼ遺伝子発現を検討した。モルフェアにおいてはコラ-ゲン遺伝子発現は炎症性病変部で増加しているが硬化性病変部では増加していないことを明らかにし得た。cutis laxa皮膚由来線維芽細胞では,コラ-ゲンの遺伝子発現には質的にも量的にも異常は認められなかったが,従来より知られていたエラスチン遺伝子発現の低下に加え,コラゲナ-ゼ発現の増加していることを証明した。またin vitroの系では,正常ヒト線維芽細胞に対する薬剤のコラ-ゲン遺伝子発現に対する影響として肥満細胞より放出されることの知られているヒスタミン,全身性強皮症に有効とされるシクロスポリンAの効果を検討した。ヒスタミンは1〜100μg/mlの濃度でコラ-ゲン遺伝子発現を増加させた。シクロスポリンAは従来より他種の細胞において知られているごとく線維芽細胞においても細胞増殖を減少させたが,コラ-ゲン産生能に対しては影響が認められなかった。また最近in vitroで線維芽細胞のコラ-ゲン合成抑制,コラゲナ-ゼ産生刺激作用の知られているpentoxifyllineを全身性強皮症患者へ投与しその効果を検討中である。
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