研究概要 |
今年度の研究は肺癌悪性度の指標として核DNA量解析を主に進め,肺癌臨床例約600例についてデ-タを得ることができた。以下にその基礎的並びに臨床的知見を記す。 1.肺癌腫瘍組織核DNA量について (1)約8割が悪性度の高いaneuploid癌と判定され,これらの予後は残りのdiploid癌に比べて有意に不良であることが判明した。さらに多変量解析にて核DNA量が独立した予後因子であることが明確となった。 (2)原発巣・転移巣間の相違が存在することが示され,特に腺癌では高率に相違を認め,悪性度の判定は原発巣のみでは不十分である可能性が示唆された。 (3)治癒切除後の晩期再発の可能性や再発部位の推定にも有用であることが示された。 (4)組織型検討では,小細胞癌・腺癌においてはさらに詳細な検討が必要であることが示された。 2.増殖関連抗原について 手術切除新鮮材料を利用して各種増殖関連抗原(BrdU,DNA polymerase αーKiー67)についての検討を開始した。その染色法・判定法について次年度での改善を予定している。 3.今後の研究の展開 あらたな指標としてPCNAやAgNORを導入し,肺癌悪性度評価の総合判断を目指すとともに,過去の研究成果(肺癌患者の免疫能,肺癌組織に対する抗癌剤感受性試験など基礎的研究の成果や術前・術後の各種補助療法の臨床成績)と対比検討し,予後改善のための至適な,かつ,効率的な治療法の立案を目指していく。
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