研究概要 |
癌の臨床的対応策は,今日なお早期発見と早期治療である。 かかる認識から,我々は扁平上皮癌の早期診断法の開発をめざし,癌関連抗原の新しい分離法を考案し,家兎を免疫して特異性の高い抗扁平上皮癌関連抗体を作成した。この抗体による早期診断での陽性率や特異性に関しては,各種市販品抗体と比較し優位であることを論文,学会等で報告してきた。 当該年度の課題は,上顎扁平上皮細胞の株化樹立と株化培養細胞の大量培養および,これらの細胞を材料とした扁平上皮癌関連抗原の分離と分取を第一目標とし,また第二目標には,大量分離をした扁平上皮癌関連抗原は4分画成分からなるタンパク複合体であることがこれまでの実験で知られているので,この4分画複合体をロトフォアによる等電点電気泳動法によりPH5.9〜6.2の間で,単一分画成分に分離することである。更に単一に分画分取した癌関連抗原抗原で家兎を免疫し,抗単一分画成分抗体の物理化学的,免疫学的検索と抗体としての特異性の検討を行うことである。 現在までの進行状況は,上顎扁平上皮癌細胞株化樹立は成功し,また同細胞の大量培養は可能となり,単一分画成分の分離・分取は進行中で,一部分離された単一分画成分による家兎への免疫作業は開始されている。 当該年度計画に基づく結果の判明と評価は,本年5月中旬が見込まれている。 なお,株化樹立細胞から得られた扁平上皮癌関連抗原(4分画複合体)で免疫し,精製した抗体による各種癌組織,良性腫瘍組織,正常組織に対する免疫組織化学的検索の成績は,従来の扁平上皮癌組織から分離して得た抗原による抗体による比較で,略同一の結果が示されている。
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