本研究におけるカドミウム(Cd)耐性V79細胞は、細胞内ダルタチオン(GSH)レベルおよびメタロチオネイン合成速度は感受性細胞と変わらず、Cdの細胞内蓄積が著しく減少していた。Cd蓄積低下の機構として、細胞外排出の促進が考えられたが、一旦細胞内に取り込まれた^<109>Cdの細胞外への排出は数時間に渡って両細胞で観察されず、これにより耐性との関連は否定された。その他のCd蓄積低下機構として、細胞膜におけるCd透過に関わる分子の変異が考えられ、そのためのアプローチとして細胞膜のCd高親和性SH蛋白をSDS電気泳動およびSH-blotting法を用いて両細胞で比較検討した結果、耐性細胞に存在し、感受性細胞には観察されない、分子量約100kの蛋白質バンドが検出された。この蛋白が耐性に関わるか否か明らかではないが、この蛋白をさらに二次元電気泳動で部分精製し、抗体作製をめざしている。一方、膜蛋白をSDS-電気泳動し、さらに膜に転写後、^<109>Cdによる結合を検討したところ、数本のCd結合性蛋白質バンドが検出された。しかし、現時点では両細胞間にCd結合能の差は観察されていない。以上の他に、昨年と同様に、Cd耐性と感受性細胞間の雑種細胞を単離し、これら雑種クローンのカドミウム感受性並びに^<109>Cdの蓄積を検討したところ、大部分のクローンはカドミウム耐性を示した。しかし、これら雑種細胞による^<109>Cdの蓄積は耐性および感受性両細胞の中間値を示したことから、雑種形成によりどちらか一方の形質のみが発現され、他は抑制されるというものではなく、Cdの取り込みに関して、両細胞の性質が共に発現されるものと推測された。
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